Text


Text発表にあたって

社会のデジタル化が進むなか、自分自身もその恩恵を受けつつもやはり郷愁を感じるのはアナログな機械が動くこと。オイルの匂いと機械が立てる音。そこから生まれる生地。繊維が人の手から人の手に渡るうちに、色を変え、形を変え、洋服になり、その洋服が着られていく。このあいだあいだに人間の創意工夫があり、それを自分は面白いと考えている。これまでトレーサビリティの取り組みを続けてきたなかで、そのつながりを意識的に考えていたからかもしれないが、自分が思う洋服作りの醍醐味を強く感じてきた。そしていま、ひとつの期が熟した。サスティナブルに特化した新しいブランドを立ち上げることにした。

 

ブランド名はText 。

テクスト、と読む。コンテクストのテクストの意味もある。素材から洋服になり、ファッションとして成り立つまでの文脈を洋服にこめる。言葉できちんと伝えるということも含む。ラテン語の「織る」が語源でもある。Textというブランドのコンセプトは、 “Farm to closet”だ。農園からクローゼットへ。そのすべての過程に直接関わりものづくりをしていく。時間をかけてできあがる洋服についてきちんと伝える。受け手にリテラシーの高さを要求しすぎない。洋服の裏側にある文脈をきちんと言葉にして伝えることが重要だと考えている。

対象は二十代から五十代まで幅広く。男性でも女性でも。ジェンダーフリーは意識すべきキーワードだ。いま着ているその洋服で本当にいいのか?その洋服を買うことは世の中のためになるのか?オーガニック志向=浮世離れといった、誤ったイメージも変えていきたい。たとえば生成りの服しか着ないような人がイメージされやすいが、そういうことではない。意識がカウンター寄りになりすぎると、アンチテーゼばかりを強調するあまり行き過ぎてしまう。それは違う。環境負荷を減らした染色による、いい色の洋服を着て気分よく暮らすことも大事だ。方法は洋服のプロである自分たちが考えるから。

サステナブルのバランスを探っている。求道的でありすぎてはいけない。自分の手で作った原料を自分で紡ぎ…ではない。一番タチ帰りたいのは産業革命以降のものづくり。それ以前の洋服は、一着の洋服がいまでいうと自動車くらいの価値があった。手仕事でしかものづくりをしていなかったのだから当然だ。それはアートや耐久消費財の世界で、それをするつもりはない。ファッションは産業革命が人々に開放した。安定的に供給ができて、そのなかで一番良いもの。ある程度の人たちが買えるものとして、ファッションとして楽しむためのもの。

僕自身、若い頃にはカウンターカルチャーにあこがれていた。ビートニクスに夢中になり、パンク、モッズをかじった。クラブにでかけ、数えきれないほどの音楽を聴いた。ニューシネマ、ノワール、たくさんの映画を観たそんなストーリーの本を探し、読んだ。そこで描かれる新しい世界を求めた人たちの話に惹きつけられた。体制の反対側にある自由が僕の中の最優先事項として今も残っている。ストリートウェアはもはや体制側に取り込まれてしまった。権威主義と煌びやかさを身につけた。サステナブルのほうがよほどカウンター的だ。サステナブルやオーガニックという概念自体は新しいものではないが、これからの時代におけるカウンターカルチャーとして考えると面白い、と思っている。

Z世代の中心となる価値観だ。大企業がやれない、政治がやれない、でも価値があることを僕らがやる。たとえば数十枚しか洋服にできない希少な原料があったとする。大きな会社は数十枚の洋服を作れない。もし特別なやり方で作ったとしても、結局価格としては僕らが作るものより高くなる。このとき、最終的にリーズナブルに洋服を作れる自分たちのほうが優位になる。テクストでは、原料を自分で探し、相手の顔が見える紡績工場で糸を紡ぎ、撚糸し、織機も選んで糸を織る。加速する現代社会において、気が遠くなるようなスローなことをする。

無農薬で育てられた素材。土地に負荷を与えない伝統農法で作られた素材を日本に持ち込み、古い織機と編み機、紡績機。時間がかかるもので生地をつくり、手のいい工場で手間暇かけながら形にする。それはファストファッションが絶対にできないこと。手間が良い洋服を作るのだ。ションヘル織機で生地を織るためにかかる時間を考える。織機に経糸をセットするのに四日、一日に織れるのは10メートルそこそこ。50メートル織るのに三日。ここまでで一週間もかかる。時間をかけてこそ得られる生地の膨らみ感。吊り編み機のテンションをかけない柔らかさ。すべての工程をすべてスローにする。農業にも時間がかかる。このすべての工程をファッションとして成立させること。これが僕らの仕事だ。

根本にあるのは僕自身が興味を惹かれるものだ。食と旅と洋服。これらは人生の大きなテーマなので、洋服と他二つをどう繋げられるのかをしっかり考えたい。オーガニックは食から学んだ。旅のための服という表面的なことよりも、素材を集め、工場へ行き、洋服を作っていく一連の工程が、旅であるようなこと。そのテクストを洋服の受け手と共有し、メインカルチャーに対しての共犯意識とともに楽しんでいきたいのだ。サステナブルなファッションの一つのあり方として。

 

2019年3月 石川 俊介 

 

 


 

 

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